【第72回日本臨床眼科学会参加報告】

琉球大学医学部 眼科

眼科ブログ

【第72回日本臨床眼科学会参加報告】

20181011日(木)〜14日(日)に東京国際フォーラムとJPタワーホール&カンファレンスで開催された第72回日本臨床眼科学会に参加してきました。日本で行われる眼科学会で最も参加人数が多い人気のある学会です。様々な分野の研究発表を中心に特別講演、招待講演、シンポジウムやインストラクションコース、セミナー、講習会といった幅広い企画が準備されていました。シンポジウムでは学会の国際化を目指し、現在活躍されている先生方が、最新の知見を英語で発表されており、大変勉強になりました。

インストラクションコースにおいては基礎編から応用編まで準備されており若手からベテランのドクターまで多くの事を学べ、楽しめる内容となっていました。人気のあるランチョンセミナーやインストラクションコースはチケット制になっているため、会場は朝7時過ぎから大行列ができており全国の先生方の熱意で会場は熱気に包まれていました。今回の学会で特に印象に残ったのがOCTA(光干渉断層血管撮影)機器の目覚ましい進歩です。数年前は撮影範囲が黄斑の一部だったのが、今ではかなり周辺部まで撮影できるようになりました。血管造影検査と違い血管からの漏出をとらえることができない弱点はありますが、それを逆手にとって異常血管を鮮明に描出します。また網膜の深さごとの血管を描出できるため、これまで明らかにされていなかった病巣の場所がわかるようになってきました。これらの特徴を生かして様々な知見が報告され、今まで分からなかった病態が解明され新しい疾患概念が出てきています。今後、これらの知見を元に病気の原因や病態がさらに解明され、治療方針なども大きな変革が起きる可能性を感じました。我々眼科医は常に最新の情報を取り入れるように日頃から努力しなければいけないと改めて感じました。

琉球大学からは古泉教授がシンポジウムで「抗VEGF薬の脈絡膜への影響」、ランチョンセミナーで「SS-OCT Triton〜私はこう使う〜」、イブニングセミナーで「Pachychoroid関連疾患の進行予防に向けて」、インストラクションコースで「眼底自発蛍光を使いこなす」を発表されました。また座長もされ大変忙しそうでした。古泉教授のご専門である眼底イメージングから今まで詳細が分からなかった脈絡膜の謎が徐々にわかってきました。最新機器の特徴と画像の評価方法、Pachychoroidという新しい疾患概念から脈絡膜に病因があること、治療方法の個別化など大変内容の濃いお話をされていました。OCT、OCTA、眼底自発蛍光は非侵襲的で繰り返し行える検査でかつ非常に重要な情報を与えてくれます。この検査結果をいかに評価することが臨床上とても大切です。酒井寛先生と力石先生はインストラクションコースで「原発閉塞隅角病の治療戦略」を発表されました。国内外での閉塞隅角の疫学調査の知見や前眼部画像診断法の進歩により産まれた新しい疾患概念や用語を解説し、検査結果の評価方法、治療方法について講演されました。今永先生と私は学術展示のショートトークで発表しました。今永先生は「Gaucher病患者に発症した牽引性網膜剥離の一例」、私が「硝子体出血後に生じた視神経乳頭上の網膜細動脈瘤」、どちらも珍しい症例でした。4日間色々な発表を聞いて大変刺激を受け多くのことを学ぶことができました。これを生かして明日からの診療に役立てていきたいです。(山内遵秀)