【第30回 日本緑内障学会参加報告】

琉球大学医学部 眼科

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【第30回 日本緑内障学会参加報告】

今回、第30回日本緑内障学会(2019.9.6-9.8)に参加、発表してきました。出発時は台風の心配もありましたが、学会期間中、気温は高く暑かったですが、天気は良かったです。今回の学会は同じ時間帯に興味があるセッションが重なっており、より興味がある方を選択しました。1つ目はトラベクロトミー(眼内法)です。近年のデバイスの進歩に伴い、より簡便な手術が増えてきました。適応としては軽度~中等度の視野異常のある患者さんですが、レクトミーの前に一度トライするにはいい手術だと考え、最近自分でも症例数が増えてきています。今後も引き続き行っていける手術だと感じました。

また、ランチョンセミナーではOCTでの解析や血流(レーザースペックル)の話が面白かったです。OCTは日常でも頻用していますが、新たな視点で見る、具体的にはNFLDの開き具合の角度の変化やRNFLやGCCの厚みのスロープで進行を見るといった、普段の検査でできることを講演されました。血流はまだ基準値ができていないので、診断には難しいというお話でしたが、今後そう言った基準値も設定していくことになるとのことでした。ランチョンセミナーというにはもったいなく、インストラクションもしくはシンポジウムに匹敵するようなセミナーでした。

イブニングセミナーでは、緑内障眼に対する白内障手術という内容でした。術中の灌流圧を20mmHgで行っている先生や、同時手術のポイントなどもありました。今後、高齢化が進むにつれ、白内障と緑内障の同時手術は増えてくると思われます。ただ、IOL眼に対する濾過手術または同時手術は単独と比べて予後が悪いとの報告もあるので、適応は慎重に行う必要があります。このセミナーで最も記憶に残っているのは、IOLの選択です。今は自分の好みや入れやすさで選んでいますが、高度な遠視などの場合は水晶体嚢が小さいためにIOLの種類によっては光学部が前方に偏位するそうです。このレンズを同時手術などに使用した場合は前房が形成不全の際にはIOLが虹彩にcaptureされる可能性が高くなります。そういう意味では症例によってIOLの選択も必要であるという内容でした。この時の講演での高度な遠視とは眼軸が16mmという状況でしたので、出会う可能性は少ないように感じますが、当院でも19mm程度は珍しくはないので、その際はこのことを念頭に適切なIOL選択を行っていきたいです。

発表に関して今回は急性原発閉塞隅角症における黄斑部網膜血管密度(Vessel Density: VD)および黄斑部神経節細胞複合体(Ganglion cell complex: GCC)の経時的変化を発表しました。WGCで発表したものの観察期間を6か月まで延長できたので、それを報告しました。結果としては有意に減少がみられたのはGCCであり、VDは減少傾向にはあるものの、有意差はありませんでした。ただ、血管密度に関しては3か月までは減少傾向であったものの、6か月では有意に増加していました。これは一過性現象ののち、回復していると考えられ、眼圧上昇による不可逆性の変化ととらえることができます。また、座長の先生からは眼圧で分けるのではなく、虚血性散瞳の有無で分けるのはいいですねと評価していただきました。

今回、ポスターの数は少ないように感じましたが、その中で特に興味があったのが1つありました。ERMに対してILM剥離を行った前後のGCCをコントロール群と緑内障群で比較したものです。観察期間は6か月で、結果としては有意差がないとのことでした。当院では緑内障眼のERMに対するILM剥離は慎重に(むしろ行わない方向)が主流だと思っていましたので驚きました。長期予後ではないのと緑内障の程度の記載はなかったようですので重症度でも比較しないといけないかもしれないと感じました。

以上、今回の学会の報告でした。最終日前日には他大学の先生たちと食事をする機会があり、熊本の郷土料理(馬、旨っ!)を囲んでいろいろな話ができ、大変有意義な時間を過ごすことができました。(力石洋平)