2019年10月10日から10月16日まで米国サンフランシスコで開催されたAmerican Academy of Ophthalmology(AAO)に参加してきました。AAOは眼科において世界で最大級の学会発表の場であり、眼科における全分野の最先端の研究と講演の場となっております。演題採択率も低く(30%程度と聞いています)、非常に狭き門ですが、今回幸運にも現在研究している内容がポスター発表で採択され、AAOに参加して世界最先端の眼科学を垣間見ることができました。
AAOは本学会開催前に各分野の講演に特化したsubspecialty dayが行われますが、網膜分野は2日間の長丁場になります。16時間の時差ボケと戦いながら拝聴しましたが、興味深い分野が目白押しでした。手術の分野ではprecision subretinal delivery systemを用いて網膜に対する細胞移植や遺伝子治療を行うデバイス、巨大黄斑円孔に対する網膜移植、ピット黄斑症候群に対する内境界膜翻転法など、明日からできそうな技術と今後の発展を期待させる方法を多く見ることができ、網膜硝子体手術における今後の期待がより一層膨らみました。また機械展示では、古泉先生のご厚意によりヘッドマウントサージェリーを体験することができ(下記写真のヘルメットを被り鑷子を操作しているものです)、近未来の手術を体験してきました。少し慣れれば直感的に操作が可能であり、OCTへの切り替えも瞬時に可能と大変面白いものです。ヘルメットが結構重量があり、アラフォーの私には首へのダメージが大きく長時間の手術は難しそうですが、今後の発展が大いに期待できます。近い将来、眼科の手術はヘルメットやサングラスをかけて行うのが一般的になる予感がしました。
自身の演題は「中心性漿液性脈絡網膜症(CSC)眼における強膜厚の検討」で、未だ明確な発症メカニズムが不明のCSC眼に対して解剖学的な検討を行いました。現状CSCは古典的なレーザー治療や光線力学的療法しか治療法がなく、今回の学会でもVICI studyの結果から選択的アルドステロン受容体拮抗薬がプラセボ群と差がないことが示されています。我々は現在、CSCの新たな病態の発見とそれに基づいた治療アプローチの可能性を模索していますが、今回の演題は非常に高い評価を頂き、光栄にもベストポスター賞をいただくことができました。今年の日本からの網膜分野での発表では唯一の受賞であったとのことで、御指導いただいた古泉先生、寺尾先生に拝謝申し上げます。
また古泉先生は今回で通算10年間にわたり演題が採択され、AAO Achievement Awardを受賞されました。琉球大学眼科でも今後も20年、30年の演題採択を目指し、医局員一同研鑽をしていきたいと思います。
今回琉球大学からは寺尾先生、古泉先生と参加しましたが、古泉先生や寺尾先生の古巣である京都府立医科大学の先生と夕食会などご一緒させていただきました。沼先生は培養角膜内皮細胞移植の術後成績で口演をされており、自分より若い先生が英語で講演しているのに大変刺激を受けました。木下先生や外園先生を始め、京都府立医科大学の先生方にはこの場を借りてお礼を申し上げます。
また学会以外でもアルカトラズ島付近へクルーズ、サンフランシスコ・ケーブルカーやゴールデン・ゲート・ブリッジの観光、グルメに関してもステーキに始まり新鮮な海鮮料理やチャイナタウンでの飲茶など、学会での勉強と同時並行で堪能させていただきました。特にサウサリートから望むサンフランシスコは非常に美しく印象的でした。来年はラスベガスでAAOが開催されます。今回の貴重な経験を糧に、また難関を突破し、AAOに演題採択されるよう精進していきたいと思います。
(今永直也)