2023年7月22日(土)・23日(日) に奈良県コンベンションセンターで開催された第39回日本眼循環学会に参加してきました。眼循環学会は全国学会でも比較的小規模の学会のおかげで、地方都市ならではの雰囲気を味わうことができます。駅からほど近い興福寺周辺でも多数の鹿がおり、奈良県の雰囲気を存分に堪能しましたが、残念ながら鹿せんべいは買えず。琉球大からは古泉教授、今永、医学科4年生の黒島長優君が参加しました。
琉球大学からは、黒島君に「滲出型加齢黄斑変性に対する抗血管内皮増殖因子療法後の患眼・僚眼の広域脈絡膜厚変化」の臨床研究の成果を発表していただきました。黒島君は琉球大学のカリキュラムである医科学研究で眼科に配属され、一般的な加齢黄斑変性とpachychoroid neovasculopathyにおける抗VEGF薬硝子体内注射後の脈絡膜変化を、広角OCTで粘り強く解析を行い、無事研究成果として学会報告できました。昨年の視能訓練士に続き、今回ついには学生にまで発表させてしまい、学会場で他大学の先生から「琉球大学はそこまで人手がいないのか?」と心配されましたが、彼の熱意と勤勉さに感銘し発表に指名したのであって、そんなことはありません。その証拠に、発表もつつがなく終了し、質疑応答も無難に答えていました。全国学会の発表で、教授クラスの質問にしっかり答える医学生という構図はとても驚きましたが、彼の勉強と発表準備の賜物であります。黒島君には自身の研究だけでなく我々の研究にも多大な貢献をしてもらい、今後も医学研究を続けてほしいと思いますし、彼のように熱意ある学生がまた来年・再来年発表してくれたら、琉球大学だけでなく学会も盛り上がるのではないかと思います。
シンポジウム1の「パキコロイド最前線!」では未だに論争が尽きないパキコロイドの病態について、ICGA、多種多様なOCT、LSFG、自律神経の評価から分子生物学的な解釈まで、様々なエキスパートの先生から多くの知見を講演していただきました。そして会場では大激論が交わされました。やはりパキコロイドの病態概念の本質を解き明かすことは、網膜脈絡膜領域での最重要課題の1つでありと痛感いたします。私の研究対象であるpachysclera理論も、当然ですがまだ全人的に受け入れられているとは言い難く、今後も更なる研究を行い、論文という形で学術的な貢献が必要であると痛感しました。また、松山賞受賞講演では滋賀医大の大路先生の講演を拝聴し、臨床上の疑問を解明することの大切さ、面白さをたくさん拝聴することができ、とても刺激を受けました。
眼循環学会はほぼ毎年参加させていただいていますが、今回も日々発達するイメージングを用いて眼循環を解き明かす、非常にエキサイティングな学会でした。最後に、黒島君の発表を快く快諾していただいた、学会長の緒方奈保子先生や事務局の方々に、この場を借りて御礼申し上げます。(今永直也)